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11 満足感の基準

LA UNDICESIMA PUNTATA  "I CRITERI PER ESSERE FELICI"

第11話 満足感の基準

2003年6月11日付イタリア日刊新聞“CORRIERE DELLA SERA”にこんな記事が あった。

生活満足度、40ヶ国調査

CENSIS(1964年に設立された社会・経済に関する調査機関)によると
世界で一番不幸せなのはイタリア人。
自分を不幸せと感じているのが世界平均では18.7%、それに対してイタリア人は
26.4%にも及ぶ。逆に、最も満足度が高いのはスイス。

イタリア人といえば思い浮かぶのは、詩人、聖人、航海人、
けれども みんな不幸人…。
他国に比べイタリアで高い率を占めたのが、不幸せと感じている人
26.4%という数字である。
世界平均は18.7%。地域別ではイタリア北西部が29.6%と最も高く、
女性に限定する と30.8%、低学歴者では33.7%、大都市で28.2%となった。
これらはISSP (世界38ヶ国が参加する国際協力機関)の2003年世界プロジェクトの
一環 として行われたCENSISの調査で、40ヶ国
(西欧諸国と中国、フィリピンなどの発展 途上国ら)の実生活満足度を示すものである。

家族が現実を支える唯一のもの

イタリア人は実生活に不満を持っている。政府の保障はますます期待できない。
強い支えやバイタリティーの源は友人や親戚から得ているのだ。
特に家族は「支え」であり、自らをゆだねることができ、
「責任のがれ」もできて しまうところである。
家族とは「イタリアの大黒柱である」…CENSIS代表の ジュゼッペ・ローマは言う。
「強い透明な柱に囲まれて生きているようなものである」。

仕事のストレス

750万人のイタリア人が、主な心配事として仕事による責任感、
健康、 将来への保障などからくるストレスを挙げている。
また63.1%の人々は、家族や友人を頼りにしていると答えている
(18~29歳に関しては71.7%にも及ぶ)。

一番幸せな国民はスイス人、そしてアメリカ人

もっとも幸せに住める国はスイス(3.6%のみが不幸せと答えた)、
そしてアメリカ (7.8%)、イギリス(8.5%)、オーストリア(8%)、日本(8.3%)の順である。
イタリアは逆に、もっとも不幸せな国であり、自分が幸せと答えたのは71.4%のみで
(平均は78.2%)、26.4%が自分が不幸せと答えている。

つまりイタリア人は、生活に不満を持っている国民であり、
さらに 政府の生活保障は期待できない状態である。
しかるべき間柄(友人、親戚、 その他第三者)の人々に
強い支えとバイタリティーを見出しているのである。

**********

あんたたち、その生活のどこが不満なんですか 、とイタリア人に問いたい。

バスが来ないからですか?クーラーがないからですか?渋滞がすごいからですか?
近所のケンカがうるさいからですか?

バスが来ないのは真面目に働かない職員がちょっと努力すれば済む ことだし、
クーラーがないのは偉そうな割にいい加減な建築家がちょっと頑張ればいい ことだし、
渋滞がすごいのはみんなが車に乗るのをやめれば済む ことだし、
近所のケンカが うるさいのはその短気なイタリア人の性格がおさまればいい だけの話である。
しかしこれらの不満、100年たっても解消されまい。
もはや伝統と文化が作り上げてしまったものなのだ。

学生を見ていて思う。ユーガだ。
学生アルバイトなんて滅多に聞かない。
ごく一部の 苦労している学生と外国人学生くらいのものだ。
確かに大学生の場合、卒業するのは 試験の難度のせいで
日本の大学よりはるかに厳しいことではあるが、
それでも何もせ ずに30近くになって卒業するのはいかがなものか。
親のスネはかじり尽くす。
ディスコに行って酒を飲んで煙草を吸って、夜の盛り場でたむろする日々

さて、社会人。夏休みは2週間 与えられる。
もちろん職場や契約状況うんぬんに よっても異なるが、
働き始めて7ヶ月の「仕事のできない」わたしでさえこの待遇で ある。
もう既にボーナスは2度 もらった。
しかしもちろん給料もボーナスも日本から 比べたら、月とスッポン、
雲泥の差であるから、ここだけを読んで「イタリアに働きに 行こう!」などとは
容易に考えないで頂きたいのだが。

毎日毎日「夏休みはいつから?」、「どこ行くの?」、
「わたしシチリア」、「ぼく サルデニア」、「チケット取らなきゃ」、
「新しい水着買った?」といった話が飽き もせず延々と交わされている。
アホらしい。

残業はよっぽどのことでない限りナシ。自分の契約時間で帰って行く。
どこかで聞い た「サービス残業」 という言葉。これをイタリア語に訳すことは不可能であろう。
そ ういえば「過労死」 という言葉が“KAROUSHI”で世界共通語だと聞いたことがあった が、
確かにイタリアで過労死は有り得ない。

これらの生活のいったいどこに不満があるのか、是非是非説明して頂きたい。

しかしある時、同僚の一人にこう言われた。
彼女の「パブに行こうよ」の何度目かの 誘いを断った矢先のことである。
「マミはディスコに行かないし、海にも来ないし、お酒は飲まないし、
タバコは吸わないし、つまんないねー 」。

ちょっと待てよ。おかしくないか?
そうなのだ、この人たちの娯楽ってば、ディスコ で踊って、海で体灼いて、
酒飲んで、煙草(時にはそうでないものも )を吸う。それ だけなのだ。
何だかモノ足りないんじゃないか?

この話を日本人の友人に話したら彼女もわたしに同感で、
「意外とイタリア人ってそ れだけの人生なんだよねー」というようなことをポツリとつぶやいた。
だからもしか したら彼ら自身も感じているのかもしれない。
やっぱりそれだけの「生活に不満足」 なのだと。

わたしはディスコに行かないし、海へは一年に一度行けばいいと思っているし、
酒は飲んだら倒れちゃう し、煙草は吸わない。
でも自分の生活には満足している。
こうやって文章を書いたり、友達とBAR(日本の喫茶店のようなもの)でお茶して ダベったり、
ジェラートを食べたり、ウインドウ・ショッピングをしたり、TVを見たり、
映画を観たり、音楽を聴いたり、仕事をしたり(やっぱりコレ入れちゃうのね、 日本人)、
友達にメールを書いたり、広場でポーッとしたり。
それらによって 満足できる。

それに満足度の高い国で生まれ育った。
日本が満足度の高い国であるというのは分か る。
失業率は相変わらず高いようだし、経済はメチャメチャ、
わけの分からない犯罪 のはびこっている世の中らしいが、
多くの人々は何でも揃った便利な生活のもとに 存在している。
欲しいものは何でも手に入る し、電車に乗れるし、
店は24時間開いて いて、暑けりゃクーラーかけていられるし、娯楽もたくさんある。
車も自転車も滅多 に盗まれない安全な国である。
そんな国に生まれ育ってつくづく良かったなあ、と 思う。
もしイタリアに生まれていたら、不満のカタマリ、
いつも「あれヤダ、これ ヤダ、老後どうしよう」なんて言いながら、
海の近くのディスコで踊って酒かっくらい ながら煙草をふかしてる女の子でいたかもしれないもの。

(2003年8月)

SANCALISTO
わたしがいつもまったりしているBAR

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